漫画大博物館
11月12日、松本零士・日高敏編著『漫画大博物館』(小学館クリエイティブ、小学館)の出版記念パーティーが銀座である。体調が悪く寝んでいたのだが、車をとばして顔をだす。 この本、四半世紀以前、1980年に、ブロンズ社から『漫画歴史大博物館』として出版された本を、徹底的に改定増補したもの。

松本零士・日高敏編著『漫画大博物館』、小学館クリエイティブ/小学館、2004
戦前から戦後、漫画週刊誌時代の、アニメ・ブームの前までを、貸し本漫画や単行本の表紙と本文とを追って、徹底的に絵で見せる画期的な仕事だ。
知るひとぞ知る。松本さんは、日本でも文字通りトップの漫画本収集家、そのコレクションを、科学ジャーナリストとしても知られる日高敏さんが整理し、まさに博物館の名にふさわしい形で編みなおしたものだ。
共著者の日高敏さんは、やはり、松本さんのコレクションを基に、小学館から、『幻の小松左京モリ・ミノル漫画全集』をまとめていらっしゃる。
小松左京が、京都大学の学生時代に、学生運動の資金稼ぎに漫画家を兼業していたのは知るひとぞ知る有名な話。
当時は、新鋭手塚治虫に対する、強力な新人ライヴァル二人のうちひとりと目されていたのである。
松本さんが漫画家を志すにあたって、そのきっかけとなったのは実はモリ・ミノルという漫画家で、ほぼ20年近くもくどきおとして、作品集刊行にこぎつけたのである。

小松左京、『幻の漫画家 小松左京モリ・ミノル漫画全集』、小学館、2002
アートディレクター 海野一雄、デザイン 小林美樹代+ベイブリッジ・スタジオ

モリ・ミノル、未完作品より。
その思い入れもあってのことか、この本、著者はあくまで小松左京で、松本さん、日高さんのお名前は奥付には、まったく記載されていない。
しかし、この著作集が出版され、そして、ハードカヴァー4冊函入り本体価格4800円という値段にもかかわらず、きちんとした売上げを記録できたのは、小松左京という作家の底力とともに、お二人の尽力があったからにほかならない。
実は、ぼくは、この企画が進行中、2001年に幕張メッセで開催された第40回日本SF大会で、日高さんとのおつきあいから、「松本零士・日高敏 モリ・ミノル(小松左京を語る」という企画を担当させていただいた。
個人的なおつきあいのゆえに出席できたのではあるが、松本さんのコレクションとは、まんざら縁がないわけではないのだ。
で、そのパーティーがはじまってしばらくたち、お歴々のご挨拶もほぼすんだころ、アナウンスが。
なんと、今回の本で、これまた松本零士さんのコレクションから使用されている、手塚治虫の『メトロポリス』の、実際には使われていなかった、カラー表紙絵が、手塚プロダクションに返還されるというのだ。
驚いたのは、その声が伝わるや、業界の長老、達人たちがわらわらと近よってゆき、椅子に座って原画を手にした松本さんのまわりをぐるり取り囲んだこと。
みな興奮しているのだ。
そのあたりの様子は、夏目房之助さんのBlog、「夏目房之介の「で?」」の11月13日分、「『漫画大博物館』刊行記念パーティ」の項目で読んでいただこう。
返還の式次第を、写真で見ていただこう。
右側は手塚プロの森資料室長、左端に日高敏さんもいらっしゃる。

そして、これが幻の表紙原稿だ。
幸いにも一枚だけ、わがコンパクト・カメラでもピンがあってた写真があったので紹介しておく。

手塚治虫『メトロポリス』、1959
夏目さんの表現を借りれば、「手塚さんの線がもっとも魅力を発揮し、色っぽかった時代」の絵である。
ただし、ぼつにされたのも無理はない。
いわゆる描き版の時代。職人が原画をなぞって、印刷原版にひきうつすため、線のタッチやカラー絵の美妙なグラデの再現なぞのぞめない時期のことなのである。
とてもこれだけの絵の魅力を伝えられるはずがなかっただろう。
で、その夏目さんのBlogの、その「『漫画大博物館』刊行記念パーティ」へのコメント・ツリーで興味深いわだいが展開されている。
つまり、スクリーン・トーンはいつから使われるようになったのかという問題だ。
このツリー、発言者がすごい。
長谷邦夫さんとか、すがやみつるさん、とり・みきさんなど現場を知り、近い時代を知るひとの間でああだこうだというわけで、じつはぼくもひとつ書き込みさせていただいたのだが、その派生で、さらなる疑問が浮かんできた。
それはつまり、
写植はいつから漫画に使われるようになったか?
という問題だ。
実は、この問題、手元の資料だけではわからないので、今日、参考資料のとりよせを手配した。明日には宅配で届くその資料とは、
『文字に生きる--写研五十年の歩み』(株式会社写研、1975)。
また、スクリーントーンの普及過程についても、レトラセット社の社史を所蔵している閲覧可能な機関の所在を確認できた。
ということで、その結果は明日ならびに10日か2週間以内に。


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