アマゾンA9ドットコムβは使えるぞ
アマゾン・コムが新しいサーヴィスを開始した。
その名は、A9.com。。
ただし、β版(試用版)であり、かつ、同じアマゾンでも、日本版ではなく、あくまで本家の方の話。
で、このサーヴィスが役に立つのは、単語レヴェルも含めて、英語でなにかを調べたい、参考になる本をさがしたいひと。
だが、ごく近い将来とは言わないが、いつかは同じサーヴィスが日本でも始められるはずだ。
まず、今回の試験サーヴィス以前にすでに本格稼動している、アマゾンのサイト内での新種の検索機能について触れておこう。
新刊、休刊を含め、版元の了解がとられた、かなりの率の本が、デジタル・テキスト化され、アマゾン本家の検索サイトで、その特定の本の紹介ならびに購入のページを開くと、書籍内の全文をフリーワードで検索できるサーヴィスの窓が開くのだ。
決して、電子出版されている本ではない。
紙に印刷された古典的な意味合いでの本として販売されている書籍の内容すべてをフリー・ワードで検索し、複数個所それぞれの前後2ページずつくらいを読むことができるのだ。
しかも、印刷されたのと同じグラフィック・イメージで。
OCRで読み取ったままの、文字データではない。しかも、電子出版でよく使われるアクロバット形式(pdfファイル)でないことも明らか。だって、アクロって重いんだもん。それが、さくさくさくさく、実に見事に読めてしまうのだ。
と、ここまでは、「週刊アスキー」の歌田明弘さんによる「仮想報道」でも紹介されていたはず。驚くべきことに、紺屋の白袴の典型、アスキーの各雑誌、目次レヴェルでさえ過去記事の検索ができないようだ。歌田さん自身のサイトはこれまたなぜかないようで、6月4日の時点では連載をまとめた単行本の中身はチェックできなかったから記憶で書く。
もっとも、記事だけだと、きちんとしたイメージわかなくて、しばらくしてから、現物を初めて見て、そのすごさが、ようやく感覚的に理解できたのだが。
「新刊」ばかりではない。実際に調べてみると、アマゾン本家では、現在版元品切れ状態と表記されるNASAのレポートなども全文検索可能ではないか。
と、ここまでは、本家アマゾンをのぞいてれば、いつかは自然に気がつくこと。
ところが、これに加えてさらに、アマゾンでは新しい検索エンジン・サイトの試験運用を開始したのである。
ウェブ検索に加えて、アマゾン内の各冊内容全文検索機能を、さらに包括的に横断検索できるサイトである。
このサイト、本家アマゾンのユーザー登録をしないとのぞけないが、検索窓にキーワードを入力し、クリックすると、左にワールドワイドなウェブ検索の結果が、右側に図書全文包括検索(ええい、なんと呼ぶべきなのだろうか?)の結果が、数行の該当個所の引用とともにずらり。
例えば、米空軍とNASAが1960年代の初めまで進めていた、有人有翼宇宙船「ダイナソア(dynasoar)」計画、実験シリーズ名X-20について調べると、右側には、
Book Results [close] Showing 1 - 10 of about 12
Mat Irvine's Auto Modelling Masterclass
by Mat Irvine (November, 1998)
page 111 : " ... a USAF vehicle to transport the pilot of Collect-Aire's X-20 DynaSoar (a purely fictional craft, as the X-20 never got further ... "
See more references to dynasoar in this book.
Spaceship Handbook
by Jack Hagerty and Jon C. Rogers (01 October, 2001)
page 371 : " ... foot length. Compared to the Mercury Spacecraft then flying, the DynaSoar was a vision of the future and made the Mercury ... "
See more references to dynasoar in this book.
以下略
と、12冊の本の該当ページの内容が表記され、クリックすると、印刷されたのと同じイメージのページ(とその前後)が表示されるのだ。
まだ精確には調べをつけてないが、アマゾン本家では、かなりの率で、全文デジタル検索が可能になっている。
いずれは、アマゾン経由で発売されるすべての本の内容を、A9で検索閲覧できるようになるだろう。
「本」には「読む本」以外に「使う本」がある。
ぼくのような物書き、ジャーナリストや研究者にとっては、ほとんどの本はぜえんぶ読み込むのではなく、必要な個所をいつでも参照できるようにしておくための「使う本」だ。
そういった立場からすれば、どうしても手元に置いておかなくちゃいけない本のかなりの部分が、この機能によって代用できるのである。
おっと、もちろん、この機能によって、必要な本を自在にさがすことができるというのも大きいが、個人的には実は、「使う本」の場合、かなりのものについては、わざわざ買って手元jに置いておく必要がなくなるというメリットの方がずっとうれしかったりするのだ。
まるで、日本で問題になっている「デジタル万引き」を、売ってる書店の方がサーヴィスとして提供しているわけで、彼ら、自分で自分の首をしめているようだが、実は違う。
アマゾン側の、商売としての目的の最初は、まず、すべての「本」がデジタル版でも、(あくまでも「でも」だが)発売されるごく近い未来を念頭に置いた上での大きな布石。
日本のアマゾンでも、新刊書の1割ほどを「立ち読み」がわりにアクロバット・ファイルとして提供、ダウンロードできるサーヴィスを一部の本で開始しているが、その究極の発展形といってよいだろう。
だが、ここまでのサーヴィスなら、あくまでも「立ち読み」の領域。しかし、A9が暗示する未来はもっとずっと壮大だ。
アマゾンがねらう究極のゴールは、いわゆる「インターネット」が騒がれはじめた頃に、いやそれ以前にも、もうすぐこうなるって、はしゃぎすぎの馬鹿どもに言われてた未来を現実のものにすることだ。
この地上のすべての本の中身が、この手のひらに載るような、あるいはグーテンベルグの時代の聖書のように大きな、「本」の形をした新しい何かにおさまる時代、アクセスできる時代。
その可能性の、端末という側面からみた未来への展望については、
前述の、元「ユリイカ」ユリイカ編集長にして、労作『マルチメディアの巨人 ヴァネヴァー・ブッシュ--原爆・コンピュータ・UFO』(ジャスト出版、1996)でノンフィクション・デビューした歌田明弘さんの『本の未来はどうなるかーー新しい記憶技術の時代へ』(中央公論新社、中公新書、2000)と、
ポストサイバーパンク世代SF作家の旗手ニール・スティーヴンスンの『ダイヤモンド・エイジ』(日暮雅通訳、早川書房、2001。"The Diamond Age: or A Young Lady's Illustrated Primer",1995)
を参考のこと。
この地上のすべての「本」がデジタル化され、不可視のインフラ(*)によって、手元にある「最後の本」につながれる未来。
(*)「インフラ」のもともとの意味は「目に見えない」ということだ。
すでに、上記二冊で紹介、あるいは幻視された「最後の本」を可能にする最初の一歩、「ペーパー・ディスプレイ」は、現実の電子本リーダーのひとつという形で、すでに商品化が開始されている。
ちょっと古いが、この「電子ペーパー」についての総合的な解説は、この記事を
電子ペーパー技術を本格化した初の製品、ソニーの製品リブリエについてはこのページを、
参考にしてほしい。
もっとも、ソニーの製品も、ディスプレイ以外の機能をおさめるために、けっこう厚くて、「本」や「ノート」「手帳」という理想のイメージにはまだほど遠いのだが。
で、ソニーの「リブリエ」に代表されるペーパー・ディスプレイ技術が、もしも、このA9検索エンジンが暗示している、過去に印刷されたすべての本をも包含する、超巨大なデジタル・テキスト・アーカイヴと、そこへのアクセス・テクノロジーと合体したとするなら、「最後の本」は「最後のアレクサンドリア図書館」となるのだ。
WWW、Mozaicに始まるグラフィックなブラウザー、Yahoo!に始まる検索エンジン・サイト、Google、インターネット・アーカイヴならびにアレクサ・ツールバーへと、今現在のわれわれが知っているという意味合いでの「インターネット」の革命は連なり、ついに、「最後の図書館」にして「最後の本」の到来への予兆とも言える、A9へと至った。
20世紀生まれとしては、はて、その寿命の範囲内でどこまで目撃できるかはわからないけど、この「革命」の明日は見えたぞ!
付記。
ただし、現在のβ版について言うなら、A9のパフォーマンスは完成の域にはまだまだ達していない。「and」や「or」などの論理演算(ブーリアン演算)機能による絞込みができないのだ。
また、自分で書いといた未来への展望に冷や水をかけるようだが、上記の「最後の図書館」「最後の本」と現在この瞬間との距離は、はるか昔、パンチカードによる情報処理を発明したホレリスや、5ビットの鑽孔紙テープによる全自動電信を発明したボード、さらに言えば、電信を実用化したホイートストーンやモース(モールス)、究極的には、メカニカルな遠隔デジタル・ネットワーク=腕木通信網を実現させたシャップと同じくらいに遠い。
数えてみると、ホレリスは110年前、ボードは130年前、ホイートストーンやモールスは160年前、シャップは210年前。
と、いうことは、うまく行ってもあと百年はかかるということだ。
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